超能力番組を10倍楽しむ本
楽工社　１７００円＋税
対象年齢　小学校高学年以上

　夕帆ちゃんと勇馬くんは中学のクラスメート。勇馬くんは『ＴＶのチカラ』や『ＦＢＩ超能力捜査官』といった番組が大好きで、その内容をみんな信じている。
　夕帆ちゃんのパパは小説家で、超能力番組をビデオに録って、そのインチキを見破るのが趣味。彼は夕帆ちゃんと勇馬君に、超能力番組を楽しむための心得を伝授する。

�@超能力番組は録画して、重要なシーンはくり返し見よ。

�A超能力番組は疑いの心を持って見よ。

�B超能力番組は思いこみを捨てて見よ。

�Cナレーションやテロップにまどわされるな。

�Dテレビにはすべてが映っているわけではないことを忘れるな。

�Eテレビ局は超能力者の味方だと考えよ。

学校関係者、および保護者の方々へ 　この本は超能力を肯定する本ではなく、テレビで垂れ流されている情報を鵜呑みにしないよう、警告するための本です。ふりがなを多用し、小学校高学年から読めるように書いてあります。 　オカルトにひっかからないため、正しいものの見方や考え方を養うため、そして若いうちからメディア・リテラシーを身につけさせるための参考図書として、ぜひこの本を子供に読ませてあげてください

プロローグ　超能力で雲が消せる

　空に浮かんだ雲を念力で消す超能力者をテレビで見た勇馬くん、「本物の超能力者だよ、あの人は！」と大興奮。信じられない夕帆ちゃんが家に帰ってパパに訊ねてみると、意外な返事。
「べつに珍しくもない。ここだけの話、パパにもできるんだぞー」
　かくして次の土曜日、パパは夕帆ちゃんと勇馬くんの見ている前で、「念力で雲を消す」「気功で手をふれずに人間を倒す」という技を披露する。すっかり信用してしまう二人。だが、その真相は……。


１　ビデオで見破れ、超能力のウソ
　登場する番組：『これマジ!?』『たけしの頭の良くなるテレビ』『水曜スペシャル』『金曜ファミリーランド』『素敵にドキュメント』

　パパは夕帆ちゃんたちに、自分のコレクションした超能力番組のビデオを見せる。同じ場面を何度も見直すと、超能力者のトリックの証拠が見えてくるのだ。それどころか、番組スタッフがインチキに加担しているものまであった！
「知らなかった。こんなことまでやるんだ、テレビって……」
「ショック……ぼくもう、テレビが信じられない」


２　ビンから消える錠剤の謎
　登場する番組：『これマジ!?』『目撃！世界の超常現象』『ギミア・ぶれいく』

　パパから心得を伝授された夕帆ちゃんたちは、『これマジ!?』のビデオを見ながら、出演した中国の女性超能力者のトリックを推理する。手をふれずにビンの中から錠剤を取り出すというのだが……。
「カメラの前で堂々とこんなことやるなんて信じられない！」


３　透視能力で犯罪を解決できる？
　登場する番組：『平成ふしぎ探検隊』『驚異の超常現象スペシャル』

　パパからタネ明かしを聞かされても、まだ勇馬くんは納得しない。テレビでよく行方不明者を超能力で探す番組をやってるじゃないですか、と。だが、パパは平然と答える。
「だって、あんなの、ぼくにもできるもの」
　またもパパは透視能力を実演してみせる。夕帆ちゃんたちがどこに行こうと、そこにあるものを次々に当ててしまうのだ。
　さらに坂本弁護士一家殺害事件をダウザーがダウジングで捜査した番組を紹介、ダウジングによる捜査がいかに当たらないかを見せる。


４　『ＴＶのチカラ』超能力者の実力は？
　登場する番組：『ＴＶのチカラ』

　それでも食い下がる勇馬くん。『ＴＶのチカラ』の中で、超能力者の透視で事件が解決したことが何度もあったじゃないですか、と。だが、パパは言う。
「いや、ひとつも」
　ずいぶん長く続いた番組だが、実は超能力者によって解決した事件はひとつもない。それどころか、番組スタッフは事件解決後に、前に放映した番組の内容をゆがめて紹介し、いかにも透視が当たったように視聴者をだましていた！
　さらに『ＴＶのチカラ』によく登場したイギリスの超能力者クリス・ロビンソンの真実も語られる。


５　『ＦＢＩ超能力捜査官』ジョー・マクモニーグルの真実
　登場する番組：『ＦＢＩ超能力捜査官』『超能力！　緊急生放送／奇跡の男マクモニーグル』『たけしのＴＶタックル』

　それでも勇馬くんはあきらめない。シ゜ョー・マクモニーグルに望みをたくす。だが、パパは説明する。『ＦＢＩ超能力捜査官』で紹介されるマクモニーグルの経歴はウソだらけ。テレビ局がインチキを流していたのだ。
「誇張どころか、事実とぜんぜんちがうじゃない！　ホラ吹くのもいいかげんにして、って感じよね」
　そればかりか、マクモニーグルの自伝の中にある、『ＴＶタックル』出演のエピソードには、信じられないほど大きな間違いがあった……。
「ええええーっ!?」
「これ、ほんとに同じ番組？（笑）」


６　『ＦＢＩ超能力捜査官』スタッフの足取りを追え！
　登場する番組：『ＦＢＩ超能力捜査官』

　いよいよ、『ＦＢＩ超能力捜査官』の検証を開始。ビデオで詳細に見ていくと、マクモニーグルの透視が実際の場所とずいぶん違っていることが分かる。それなのに行方不明の人が見つかるってどういうこと？
　インターネットで検索し、ついに駅名にモザイクのかかった駅がどこなのか判明する。こうなったら現地に行って確かめるしかない！　現地を訪れた３人は、番組中の描写がデタラメだったことを発見する。
「テレビってこわいなあ……」







７　超能力を科学的に研究する

　もし超能力というものが本当にあるなら、どうやって証明したらいいだろう？　パパは二人に、超能力研究の歴史を解説する。発覚したいくつもの不正や失敗。実験の結果をまともに受け取ろうとしない研究者たち。いったい「科学的」ってどういうこと？
「科学者も人の子って、そういうことなのね」


エピローグ　映像のウソにご注意
　インチキをやっているのは超能力番組だけじゃない。ドキュメンタリーやニュース番組にもウソがある。バラエティ番組はウソだらけ。
　映像のウソはどこまで許せるか？　そしてウソはどうすれば見破れるのか？
「ようし、ぼくも今度から、超能力番組をビデオに取って楽しむことにするよ！」


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