山本弘をめぐるデマ

　今さら言うまでもないが、ネットを流れる情報、とりわけ掲示板に書かれる情報には、いいかげんなものが多い。
　ごくたまに、自分の名前や作品名で検索してみるのだが、そこでヒットする掲示板には、あまりにデタラメな情報があふれかえっていて、あきれてしまう。正しい情報の方が少ない気がするぐらいだ（笑）。

　たとえば、僕が生まれて初めて２ちゃんねるを覗いたときに目についたのが、こういう大マヌケな文章だった。

　あの〜（苦笑）。
　もしかして、『ソード・ワールドＲＰＧ』のシステム作ったの、僕だと思ってる？
　『ソード・ワールド』のゲーム・デザイナーは清松みゆきだってことは、ＴＲＰＧマニアの常識だ。僕はデータの一部を手伝っただけ。そんな基本的なことも知らない奴が、ＴＲＰＧについて偉そうに語るというのがおこがましい。
　だいたい、僕が商業ベースで発表したＴＲＰＧのシステムは『ＴＲＰＧスーパーセッション大饗宴』（エンターブレイン・２００２年）に載せた「元気全開！」が最初で、今のところ唯一。２０００年の時点で、「ＴＲＰＧのルール作りに定評」なんてあるわけがない。誰がそんな「定評」立ててるんだ？
　似たようなので、こんなのもあった。

　すまん、僕はノヴェライズを書いただけで、ゲーム版『ラプラスの魔』にはまったくタッチしてないんだ（笑）。当然、僕の経歴に、ゲーム版『ラプラス』は最初から載ってない。
　ついでに、僕が以前所属していたグループＳＮＥ関連のスレッドも覗いてみたら、これまたひどいデタラメだらけで腹を抱える代物だった。ＳＮＥに誰が所属しているかも分かってない奴、ＳＮＥがどんなゲームを作っているかも把握していない奴が、えらそうなことをほざきまくるのだからたまらない。

　こういうそそっかしい奴はいくらでもいる。

　教えてあげよう。それは『トンデモ本の逆襲』のあとがきで、三上晃氏が大学の講師をしているという信者の手紙に対してツッコんだくだりだ。
　正確に引用すると、

　要するに「大学の講師をやったからって偉いわけではない」ということを言ってるんだけど……理解できませんでした？
　なお、三上氏の信者の手紙はその前のページに載っており、「それに該当する部分が見当たらない」というのはア×××ラとしか言いようがない。
　だいたい、これのどこが「中国人風」なのか。脳内で勝手に改竄するにもほどがある。

　まあ、これなんかはいちおうソースが（間違ってはいるけど）判明しているものだが、中にはどこから出た話なのかまったく見当もつかないものもある。
　最近、あるＨＰで発見して仰天したのは、

（註：現在は訂正されている）

　知らんぞー（笑）。そんなのまったく覚えがないぞー。
　僕と豊田氏の関係といえば、豊田氏が『ＳＦマガジン』で読者から送られてくるショート・ショートの選考をされていた頃に投稿したことがあるのと、イベントで２〜３回、顔を合わせたことがある程度。弟子入りしたことはもちろん、心の中で師と仰いだことすらない。（僕の心の師はＣ・Ｌ・ムーアとフレドリック・ブラウンとマレイ・ラインスターだ）
　いったいどこからこんな話が発生したのだろうか？　いくら考えても思い当たるフシがない。

　この他にも、僕の妻は『ソード・ワールドＲＰＧリプレイ』のザボのプレイヤーだったとか（まったくの別人）、僕が『サーラの冒険』のつづきを書かないのは富士見書房と喧嘩したからだとか（純粋に僕の怠慢によるものであり、富士見書房には何の責任もない）……いやはや、よくぞまあ憶測や妄想を断定的に語れるものだと感心する。
　もちろん、こういうデマは僕ばかりが標的になっているわけではない。脚本家の堺三保氏は以前、「堺三保はアムウェイだ」という悪質なデマを２ちゃんねるで流されたことがあるそうだ。本人はアムウェイとは何の関係もなく、やはりどこから出た話なのか見当もつかないという。まさに火のないところに煙が立っているのだ。

　まあ、何かの誤解や記憶違いによる誤情報なら、まだ罪は軽い。
　しかし、中には明らかに悪意をこめてデマを創造する者もいる。
　たとえば、こんなの。

　利益を独占？　何のこっちゃ。トンデモ本シリーズの印税は、本文のページ数で割って、執筆ページ数に比例した金額が執筆者全員に公平に振り分けられている。
　多くの本の場合、僕の執筆量が最も多いので、僕の取り分も多い。しかし、たとえば『愛のトンデモ本』（扶桑社）の場合、僕の執筆量はわずか15ページ、本文全体の５％程度だったので、僕の受け取った印税は０．５％程度にすぎなかった。当然、岡田氏や唐沢氏がそれを「良く思っていない」なんてありえないのだ。
　さらにあきれるのは、この直後、上の情報に信憑性を与えようとでも企んだのか（笑）、僕の偽者が出現したのである。

　いやー、なんかもっともらしいこと言ってやがるな。全部嘘だけど（笑）。
　だいたい、「と学会の名前を使用して金儲けはだめ」なんて規則があるわけがないのは、論理的に考えてみれば誰でも分かるだろう。
　当然、「偽者じゃないか」と疑われるわけだが、それを取り繕おうとした発言が、マヌケで笑える。

　何なんだよ、「街にいましたが」っつーのは!?（爆笑）
　お前、カマかけられてんだよ。それぐらい気がつけ！　僕の偽者だったら、もうちょっと頭のいい回答してみせんかい！
（まあ、そもそも頭のいい奴はこんなことしないか……）
　僕の偽者が出現したのはこれが最初ではなく、最後でもない。２ちゃんねる以外のところにも出現している。
　なお、僕は「２ちゃんねるには金輪際何も書きこまない」という誓いを立てているので、２ちゃんねるに現われる「山本弘」はすべて偽者と思っていただきたい。

　２００３年６月の日本トンデモ本大賞の直後にも、またまたこんなデマが出た。

　と学会員の内部告発のふりをしているが、これまた偽者である。だいたい「ＨＰが更新される前に会員は受賞作を明かしてはいけない」なんて規約なんてない。
　この際だから、と学会の規約について書いておこう。
「年会費を納入すること」
「入会するには会員２名の推薦が必要」
　基本的にはこの二つだけだ。むっちゃアバウトな会だな（笑）。まあ、僕が最初から「会則でみんなを縛るのは嫌だ」って言ったからなんだけどね。

　デマの中でも特に根強いのは、「山本弘はサヨクだ」というデマである。
　はあ、僕がサヨクですか？　中国も北朝鮮も日教組も好きじゃないんですが、それでもサヨクですか？　マルクスも毛沢東も読んだことないんですが、それでもサヨクですか？　産経新聞を購読してますが、それでもサヨクですか？（もちろんウヨクでもない。いわゆるノンポリである）
　どうも『トンデモ本の世界Ｒ』で、今やウヨクの聖典と化した『戦争論』を取り上げたのがお気に召さなかったらしい。こういう連中は人間を「右か左か」の二分法で決めつけたがる傾向があるようだ。「ウヨクを批判する奴はサヨク」という単純な論理しか持ち合わせていないのである。右でも左でもない人間がいるということを理解できないのだ。
　いや、憶測でものを言うだけならまだいいのだが、中には僕を中傷する目的で露骨な嘘を書く奴がいる。
　その中でも特に悪質なものをいくつかご紹介しよう。

　この文章には３つの大きな嘘がある。

　第１の嘘は、僕が『戦争論』をトンデモ本大賞に選ぼうと画策したというくだりである。僕は『戦争論』を大賞候補にノミネートしようとしたができなかったというのだ。
　じゃあ、お訊ねしたいのだが、いったいトンデモ本大賞のノミネート作は誰が選んでいると思っているのだ？
　僕なのである。
　毎年、トンデモ本大賞ノミネート作は、僕の一存で決まっているのだ。『戦争論』が大賞にふさわしい本だと思うなら、ノミネートしていた。そう思わなかったらノミネートしなかった。それだけのことである。
　このことは僕以外のと学会員の誰に訊いていただいてもいい。「トンデモ本大賞ノミネート作を決めているのは山本会長だ」と答えてくれるはずである。
　この事実だけで、こいつの論旨が破綻していることがお分かりだろう。

　第２の嘘は「イベントの席上で脈絡無く戦争論をけなしこれを誹った」というくだりである。
　そのイベント（横浜で開かれたＳＦ大会における「日本トンデモ本大賞」）の一部始終は『と学会年鑑２００１』（太田出版）に収録されているので、お読みいただきたい。確かに僕は『戦争論』を「ヒドい本」と言っているが、『戦争論』の内容に言及した発言は222〜223ページの計６行にすぎない。正味48ページ、千数百行のうちの６行だ。それに対し、『買ってはいけない』については221〜222ページで16行も言及している。
「戦争論のとんでも本大賞受賞を画策する」というなら、６行はあまりにも少なすぎはしないだろうか。

　第３の嘘は、僕が左翼のトンデモ組織を無視するというくだりである。じゃあ、『トンデモ本の世界Ｒ』で、『戦争論』の次に『買ってはいけない』（週刊金曜日）を取り上げているのはどういうわけ？
　まさか『週刊金曜日』がどんな雑誌か知らないというのではあるまいな。
　それに『トンデモ本の世界Ｒ』の226ページでも、『買ってはいけない』のことを「左翼系のトンデモ本」と呼んでるんだが、気がつかなかったとでも言うのか？
　つーか、そもそも「ウヨクだ」とか「サヨクだ」とかいう誤解を避けるために、『トンデモ本の世界Ｒ』ではわざわざ『戦争論』と『買ってはいけない』を並べて紹介したのだが、そういう配慮には気がついてくれないわけね……。
　まあ、こういうアホに対しては、配慮なんて無駄ってことなのか。
　ついでに言っておくと、『戦争論２』は取り上げる予定はない。念のため。

　なお、トンデモ本には右翼系が多いというのは、超古代文明ものやユダヤ陰謀ものに関しては事実である。「３０００億年前から天皇制はあった」とか「日本はかつて世界を支配していた」とか「すべてはユダヤのしわざである」といった説を信じる心理が、右翼思想と密接に結びついているのは当然のことだ。左翼が『竹内文書』のようなものにハマる状況は、ちょっと想像しにくい。
　しかし、それ以外のジャンルに関しては、あまり思想的に右寄りとか左寄りとかいった傾向は見られない（アダムスキーなどのコンタクティ系の本などは、こじつければ共産主義的と言えるかもしれないが）。旧ソ連で超能力やＵＦＯの研究が行なわれていたことでも分かるように、右だろうと左だろうと、ハマる時にはハマるものなのだ。

　もっとひどいのは、同じ掲示板にあったこんな発言だ。

　ほー、「この両耳で、はっきりと聞いた」のか？　そりゃきっと電波が聞こえたんだな（笑）。
　あと、「年鑑」ぐらいは正しく書こうよな。２回も書き間違えるって、恥ずかしいぞ。
　あの会場には200人以上の人間がいた。その全員が証人である。僕は『新しい歴史教科書』について何ひとつ発言していない。
　念のために、この年のトンデモ本大賞の会場にいた方のレポートをいくつかリンクさせていただく。

http://homepage3.nifty.com/housei/sftaikai2001.htm
http://www.infosakyu.ne.jp/~yamaken/etc/sf2001/sf2001.html
http://home9.highway.ne.jp/hwh01348/hibi011011.html
http://homepage2.nifty.com/yuzuriha/sf2001.html

　いずれも「山本弘が『新しい歴史教科書』をけなしまくった」なんて書いていない。そんな事実などなかったのだから当然である。
　これは推測だが、この文章を書いた奴はＳＦファンではなく、ＳＦ大会にも来ていない。実際に参加した経験のある者なら、ＳＦ大会がどれほど賑やかなイベントか知っているし、そのレポートがあちこちのＨＰに載ることは予想できるはずだ。こんなデマを流してもすぐにバレることぐらい分かるだろう（まあ、ＳＦファンでなおかつバカという可能性も否定はできないが……）。
　先に『戦争論』について書いたことの繰り返しになるが、もし僕が『新しい歴史教科書』をトンデモ本大賞にふさわしいと思ったのなら、ノミネートしている。だいたい、大賞に選ぼうとする一方「隠蔽する」なんて理屈に合わないじゃん。
　何考えてんだか。

　ついでだから、僕が『新しい歴史教科書』についてどう思っているかも書いておこう。ニフティサーブのＦＣＯＭＥＤＹＳ「裏モノ会議室」に、2001年７月10日にアップした文章である。発言はまだ残っているので、ニフティに入っている人なら誰でも読めるはずだ。

　省略した後半部分は、世間で問題になっている箇所（日朝関係、日中関係）以外の部分について、些細な歴史的間違いをいくつか指摘しているだけである。思想的側面はまったく批判していない。だいたい「ぜんぜんトンデモなくなんかない」「いっしょに読んだ中国の歴史教科書の方がはるかにトンデモ」と断言しているではないか。
　しかし、バカはそうは思わない。彼らは
「『戦争論』を批判する人間はサヨク」→「山本弘はサヨク」→「サヨクだから『新しい歴史教科書』を憎んでいるはず」
　という幼稚な妄想をふくらませ、あげくに露骨な嘘をついてまで僕を貶めようとするわけである。

　他にも、僕をサヨクと決めつける根拠はしばしばアップされるが、どれもトンデモないこじつけばかりである。
　中でも笑ったのは、僕が唯物論者だからサヨクだという主張。「唯物論者＝サヨクだというのは常識」なんだそうだ。
　ほー、それじゃあラヴクラフトもサヨクだったんだ（笑）。　知らなかったよ。
　もひとつついでだ。こんなのも挙げよう。

「ゴルフは国を滅ぼすスポーツだ」というのは、どこでだか忘れたが、確かに言った記憶がある。ただでさえ狭い国土で、少数の人間がプレイするためだけに広大な山林を伐採し、農薬をまき散らすのだから、環境にとって有害。それに比べてＴＲＰＧやボードゲームはずっと地球に優しいぞ……というのが僕の持論である。左翼思想とは何の関係もない。（それとも「環境保護を唱えたらサヨク」なのだろうか？　うーむ、バカならそういうことも言い出しかねんな）
「消費税にヒステリー起こした」というのは……ごめん、ヒステリー起こしたことはもちろん、消費税について何か発言した記憶すらないんだが、僕がどこでそんな発言をしたのか教えてくれないかね？
　それとも、やっぱり「電波」なの？

　ここに抜粋したのはほんの一部である。まだこの何倍ものデマがネットに流れ続けているが、すべて紹介するのは疲れるのでやめておく。
　こういう連中が二重のバカであることはご理解いただけたと思う。「山本弘はサヨク」と思いこむ、論理性の欠如したバカであると同時に、気に入らない人間に対してデマをばらまいて貶めてもかまわないと信じる、モラルの欠如したバカなのだ。

【付記】２００４年６月１６日
　上の文章を書いた後で、さらにこんなデマがいっぱいの掲示板を発見。

　空手を習ったことなんてありません。そんなことを書いていた「信者」とは誰なのかも不明。
　しっかし、平凡なイメージだよねえ。同じデマ書くにしても、もうちょっとオリジナリティっつーもんはないのかい？

「管理人」というのが誰なのか知らない。もしかしたら、僕の掲示板上でトラブルを起こしてレッドカードを出された奴の誰かという可能性はある。悪質な荒らしに対しては、一時的にアクセスを禁止する場合もある。締め出された奴が逆恨みでデマを流しているのかもしれない。
　20は事実無根。僕が削除するのは荒らし発言だけである。つーか、今日（2004年６月16日）まで、僕はこんな掲示板の存在すら知らなかったんだが（^^；）。

　すまん、「２」は最初の方やっただけで飽きてやめちゃったんだよ（うっとうしいキャラクターが多すぎて）。
　「１」は３周したんだけどな。
　ところで、「『ときメモ』にハマった」というのは、中傷として意味があるのだろうか？　そんなもん罪でもなきゃあ恥でもないんだが……よー分からん。

　ええっと、『ＲＰＧなんてこわくない！』のあとがきで、「僕の究極の野望はいつか商業誌でマンガ家としてデビューすること！」と書いたことかな？　もう10年以上前の野望で、あれ以降まったく上達しないもんで、今ではすっかりあきらめてますが。そんな昔の話を持ち出されても困っちゃうな。
　それに「小説家止めて」なんて言ったことは一度もない。その「仲間」って誰なのさ？　実名出してみろよ、おら！
　なお、僕の絵が下手っぴなのは事実なので、その点については弁解はしない(^^;)。

　昔、ラエリアンの集会に行って、科学的矛盾点にツッコミを入れたことまでは事実。しかし、「困った主催者が」以降は完全な創作。むしろ、すっかりなごんでしまって、関西支部の支部長さんに「山本さんはもうラエリアンです」という、ありがたくないお褒めの言葉までいただいたぐらいである(^^;)。
　主義主張はともかく、彼らは温和で、人間的にはとてもいい人たちだった。実際に会ってみれば、彼らに対して腹を立てるのは難しいと分かるはずだ。
　そもそも「そんな話、誰に聞いたんだ!?」って問い詰めたい。僕がそんなことを言っていない以上、ラエリアンの側から流れた話ということになっちゃうんだが……？
　ラエリアンがそんな陰険なデマを流すとは考えにくいので、たぶん「山本弘は学歴コンプレックスがある」（これもデマなんだが）と思ってる奴が創作した話だろう。

　論理的に考えればおかしいと気がつきそうなものだが、本気にするバカもいる。

　だからさ、こういう掲示板にあるソース不明な情報を、うかつに信じちゃいかんのだってば！

【追記】２００４年６月１７日

　ふと思ったんだが、こういうデマを見ると、それを書いたり信じたりする連中の心理というのが透けて見えてくる。
　たとえば「山本弘は学歴コンプレックスがある」というデマ（もしそんなもんがあるんなら、大学の生協で大学生に囲まれてバイトなんかしないってば）。これを考えた奴は、「もし俺が工業高校卒だったら学歴コンプレックスを抱く」→「だから山本もそうに違いない」と思っているのだろう。
　あるいは「山本弘は東大で講師をやったことを鼻にかけている」と思っている奴。これを考えた奴は、「東大の講師をやったら人はそれを自慢するはず」と思っているのだろう。冗談じゃない！　たった１回、ゲストで講師をやったぐらいで自慢するような奴がいたらバカである。
　もっとも、世の中にはそういうバカもいる。某ＵＦＯ研究家がテレビに出演した際、「○○大学講師」というテロップが出たので調べてみたら、非常勤で何回か教壇に立っただけと判明、「うわー、そんなのテレビで名乗るなよ、恥ずかしい！」と思ったもんである。
　僕は権力欲というものがまったくない人間である。と学会会長という地位だって、他の連中から押しつけられて、しぶしぶなったものだ。名誉欲はあるが、実力で有名になりたいと思っている。「東大講師」だの「イオンド大学教授」だの「発明大学の博士号」だの、実体のない肩書きで自分を飾ろうなんて思わない。そんなもので他人は騙せても、自分は騙せない。金銭欲もあまりない。とりあえず家族を食わせていける金があれば充分と思っている。
　しかし、連中はそんな人間が実在するということが信じられない。
「山本弘は東大で講師をやったことを鼻にかけている」と思いこむ奴こそ、もし東大で講師をしたらそれを自慢するような奴ではないのだろうか？　自分がそうだから、他人もそうだと思っているのではないのか？
「本の利益を独占している」というデマは、自分自身の金銭欲の顕われじゃないのか？　もし自分が共著で本を出すなら、共同執筆者より取り分を多くしてやろうと思ってるんじゃないか？
　『戦争論』や『新しい歴史教科書』関連で、根も葉もないデマを流している奴もそうだ。彼らは卑劣な行為を平然とやる性格である。だから、自分の敵も同じことをやるに違いないと考え、妄想をふくらませ、デマを生むのだろう。
　そう、彼らが攻撃しているのは、実在の山本弘ではなく、彼ら自身の心の中にある悪なんだよね。