かがくぼうけん絵物語

それゆけ　ぼくらの　シルバーかめん
（おことわり）
この物語の設定は1969年です。

　はじまりはじまり〜。

ここは　たいへいようの　どまんなか。とうきょうに　むかう　タケルくんと　すみかちゃんを　のせた　きせんが　しずかに　よるの　うみを　すすんでいきます。「フランシーヌの　ばあいは〜　あまりに〜も　おばかさん」かんぱんで　フォークを　うたう　ふたり。そのとき　くらい　なみまに　あやしい　ひかりが　みえました。「あ、あれは　なんだ！」
ガガーン！　きせんが　とつぜん　なにものかに　おそわれ、おおきく　ゆれました。エス・オー・エス　きせんをおそう　深海かいじゅうの　しょうたいは……。
ぬるぬる　ぶきみな　たこの　かいじゅうだったのです。「キャー」すみかちゃんは　うみに　おちてしまいました。「すみかちゃーん」タケルくんは　あわてて　とびこみます。きせんは　かいじゅうに　べきべきと　おられて　しずんで　しまいました。
すみかちゃんが　きがつくと、どこかのしまの　かいがんでした。「ぬれた　ふくを　かわかさないと　かぜをひくわ」そういって、いわばで　ふくぬぐ　すみかちゃん　なんてえふだは　ありません。ざんねんです。「タケルくーん」ふあんに　ふるえながら、すみかは　ふかい　もりのなかに　はいっていきました。ちょっと　はんそくですが、ゆるしてください。
そのとき、ズシンズシンと　おおきな　あしおとがしました。きを　めりめりと　たおして　あらわれたのは……。「あー、あれはケラトザウルス　にくしょく　きょうりゅうだわ！」きょうりゅうに　くわしい　すみかちゃんが　さけびました。さいきんは「セラトサウルス」という　ひょうきが　いっぱんてきです。ねんのため。
「こんなところに　きょうりゅうが　いるなんて　あっとおどろくタメゴローだわ」かんしん　している　ばあいではありません。　一ぴきの　きょうりゅうが　すみかちゃんを　みつけて　おいかけてきました。にくしょくきょうりゅうは　ねらった　えものは　にがさないのです。「たすけてー」
「すみかちゃん、こっちだ」タケルくんが　たすけに　きました。「こわかったわ　タケルくん。このしまは　いったい　なんなの？」「どうやら、ぼくたち　もりと　ジャングル　きゅうりゅうの　せかいに　きちゃったらしいぞ」
「でも、きょうりゅうは　おおむかしに　ほろんだはずよ。アポロが　つきに　いく　このじだいに　いきているなんて」「そんなことはないよ。コモドとうには　きょうりゅうの　いきのこりと　いわれる　４メートルもあるコモドドラゴン　おおきな　トカゲが　すんでいるんだ。みなみのしまに　きょうりゅうが　いきていても　ふしぎはないさ」
しかし　このしまに　すんでいたのは　きょうりゅう　だけでは　ありません。がけを　のぼろうとした　ふたりの　まえに　けむくじゃらの　かいじんが　あらわれました。「きゃーっ」「ああっ、あれは　アルプスに　すんでる　ゆきおとこ！　どうして　こんな　ところに」「タケルくん　ゆきおとこは　ヒマラヤよ」すみかちゃんは、きほんてきな　つっこみを　いれます。「しかたないじゃないか、そういう　よみふだなんだから」
「ああっ、こっちにも　べつの　かいじゅうが！」ひとつ目の　かいじゅうは、ルビーの　ように　かがやく目で　すみかちゃんを　にらみます。「ああ、あたまが　くらくらしてきたわ」すみかちゃんは　なんだか　エッチな　きぶんに　なってきました。「うふーん、あはーん」「いけない、さいみんじゅつに　かけられてるんだ」タケルくんは　すみかちゃんの　てを　ひいて　にげだしました
「ハレンチな　かいじゅうだったわね」もとに　もどった　すみかちゃんが　プンプン　おこって　いいました。「それにしても、なんてサイケな　しま　なのかしら」「そうか、ここはただの　きょうりゅうの　しまじゃない。かいじゅうが　たくさん　すんでる　かいじゅうのくに　だったんだ！」
「ギャオー」一ぴきのかいじゅうが　せまってきました。「にげるんだ！」タケルくんたちが　まっしぐら　にげる　うしろに　ぶきみなかいじゅう　がせまります。ふたりは　どうくつに　にげこみました。
やっと　のがれて　いわのなかで　ひといき　ついたふたり。そのとき、なにかぬとぬとした　きみのわるいものが　すみかちゃんの　足にからみつきました。「きゃっ、いったい　なに？」
それは　へんな　かおした　クラゲの　おばけでした。「こんなやつなら　こわくないぞ」ふたりは　ゆうきを　ふるいおこし、ゲバぼうを　てにして　なぐりかかりました。「えい、えい」「ニャロメ」「そうかつ　してやる」「くけーっ」へんな　こえをあげて　クラゲの　おばけは　にげていきました。「よくやった、ゆうきある　こどもたちよ」どこからか　こえがします。「だれだ！」
その　こえの　ぬしは　ぶきみな　ほねのかいぶつ　がいこつ　にんげんでした。「おそれなくてもよい。わたしは　みかただ」「なにものだ！」「わたしは　アトランティスの　ゆうしゃスカルおうじ。きみたちの　ような　ゆうきある　こどもが　あらわれるのを　このどうくつで　二まんねんも　まっていたのだ」「アトランティスだって？」
「そうだ、このしまの　おきの　ふかいうみ　なぞのたいりく　アトランティスが　しずんでいる。わたしは　そのくにの　おうじだったのだ」「でも、ここは　たいへいようよ。アトランティスは　たいせいようでしょ」と、またも　すみかちゃんが　つっこみましたが、スカルおうじは「ガメラだって　そうだろう」と、いっしゅうしました。
「きみたちには　このシルバーかめんの　ゆびわを　あげよう。」「シルバーかめん？」「おおむかし、はるか　うちゅうの　とおい　ほしから　アトランティスに　やってきた　せいぎの　まもりがみだ。あぶなくなったら、このゆびわを　あわせて『シルバー』とよべばよい。シルバーかめんが　うみのそこから　あらわれ　たすけてくれるだろう。では、さらばだ」そういって、スカルおうじは　きえてしまいました。
それから　二しゅうかん　かけて、タケルくんと　すみかちゃんは　かいがんで、しまから　でるための　いかだを　つくりました。ようやく　かんせいした　ときには　ふたりとも　ふくが　ボロボロに　なっていました。「まるで　ヒッピーぞくに　なったみたいだわ」「でも、これで　にほんに　かえれるぞ」そこに　みなみの　うみの　だいかいじゅうが　しゅつげんしました。
めらめら　火をふく　かいじゅうの　くち。「あちちちち」「きゃー、ふくに　ひがついたわ」あわてて　ふくぬぐ　すみかちゃん　なんて、だからそんな　よみふだは　ありません。「そうだ、いまこそ　シルバーかめんを　よぼう」ふたりは　スカルおうじから　もらった　ゆびわを　あわせました。「シルバー！」
「はいはいさー」なみから　かおだす　うみぼうず。「ええっ、あれが　シルバーかめん？」「ちがうだろう」「およびでない？　これまた　しつれい　いたしました」うみぼうずは　じだいおくれの　うえきひとしの　ギャグを　いって　ひっこみました。
「むうーん！」うみの　そこで　ほんものの　シルバーかめんが、二まんねんの　ねむりから　さめました。ひらり　とびたつ　うみの　うえ。アンコウかいじゅうも　びっくりです。
「あれが　シルバーかめん！」「ウルトラマン　みたいだ！」はじめて　みる　すがたに　タケルくんたちは　びっくりです。「こどもを　いじめる　わるい　かいじゅうめ。シルバーかめんの　せいぎの　つるぎを　うけてみよ」
「えい、とお」いさましく　たたかう　シルバーかめん。たちまち　だいかいじゅうを　やっつけて　しまいました。「うわーい、ジャイアントばば　より　つよいぞ、シルバーかめん」「いかすわ」タケルくんたちは　おおよろこび　です。
タケルくんと　すみかちゃんは、いかだにのって　らんとうつづく　かいじゅうの　しまを　あとにしました。とちゅう、じえいたいの　ごえいせんに　ひろわれました。「これで　ひとあんしんだね」「やっと　にほんに　かえって　テレビで　グループサウンズが　きけるわね」「ぼくは　ゲバゲバ９０ぷんが　みたいなあ」
「でも、おしいことを　したなあ。なにか　あのしまの　おみやげを　もってくれば　よかった」「そうくると　おもって、わたしは　かわいい　かいじゅうの子を　ひろってきたのよ」「こりゃあ　いいや。おおさかの　ばんぱくで　てんじしたら、だいひょうばんに　なるね」そのとき、にほんから　きんきゅう　つうしんが　はいりました。
「ごえいせんへ。いま　とうきょうは　おおさわぎだ」「また　しんじゅくえきで　ぜんがくれんが　あばれてるんですか」　「そうじゃない。かいじゅうが　じょうりくしたんだ。ただちに　にほんに　ひきかえせ」「れんらく　オーケー」　ごえいせんは　おおいそぎで　にほんにむかいます。
タケルくんたちが　にほんに　かえってくると、すでに　くびなが　かいじゅうが　まちで　あばれまわっていました。「うてー」せんしゃたいの　たいちょうの　めいれいで　せまるかいじゅう　いっせい　しゃげきが　はじまりました。ドカーン。ボーン。しかし、なかなか　かいじゅうは　たおれません。それを　みていた　タケルくんは「あのかいじゅう　のどを　かばっている　ようだぞ」と　きづきました。
「きっと　あのかいじゅう、のどが　じゃくてんですよ」タケルくんが　いいました。「ふむ、こどもの　すなおな　かんがえは、ただしいことがある」たいちょうは　うなずいて、ぶかに　めいれいしました。「かいじゅうの　のどをめがけて　ミサイル　はっしゃ」ズーン、ズーン。かいじゅうは　のどがやぶれて　くるしがって　しんでしまいました。「やった！」「きみの　おかげだよ　タケルくん」
しかし、かいじゅうは　ほかにもいました。あの　かいじゅうのくにに　いたような　きょうりゅうが　しっぽを　ふりまわしています。ビルを　いちげき　なぎたおすほどの　かいりきで、せんしゃたいも　くせんです。「このままでは　とうきょうは　ぜんめつだ」みのべ　とちじも　あたまを　かかえています。
「そうだ　シルバーかめんを　よぼう」ふたりは　ゆびわを　あわせました。「シルバー！」たちまち　シルバーかめんが　みなみの　うみから　とんできました。「それゆけ　ぼくらの　シルバーかめん！」タケルくんたちは　こえをそろえて　おうえんします。
「むうーん」きょうりゅうの　ゆくてに　シルバーかめんが　たちふさがります。「えい」ぎんの　けんを　ひとつき　すると　かいじゅうは　あっさり　しんでしまいました。「かっこいいなあ、シルバーかめん」「ジュリーより　しびれちゃうわ」
「それにしても、どうして　かいじゅうの　しまの　かいじゅうたちが　きゅうに　にほんに　あらわれたのかしら」すみかちゃんが　そらを　みあげました。「あっ、あれは？」よぞらを　とびまわる　ぶきみな　ひかり。そう、それは　ちきゅうを　おそう　そらとぶ　えんばん　だったのです。「そうか　わかったぞ。かいじゅうは　あいつらが　あやつっていたんだ」と　タケルくんがいいました。
「ルロロロー」えんばんから　きみょうな　こえが　ひびきます。「われわれは　かせいに　すんでる　うちゅうじんだ。しょうわげんろくで　うかれきっている　このにほんを　せんりょうしてやる」「なんだと、そんなことはさせないぞ」「こっちには　シルバーかめんが　いるのよ」
「ルロロロー、ちょこざいな、ポンコツの　シルバーかめんなど　われわれの　きりふだ　リモート　コントロール　ロボット　かいじゅうで　ひとひねりだ」えんばんの　なかから、おそろしい　てつのかいじゅうが　あらわれました。「ゴンゴンゴン、ラホーイ」「なにを、まけるものか！」「がんばって、シルバーかめん！」
「ルロロロー、ねんぐの　おさめどきだぞ、　シルバーかめん」うちゅうじんが　いいました。かせいにも　ねんぐが　あるのでしょうか。「これでもくらえ」ロボットかいじゅうの　おなかから、きょうりょくな　ロケットが　つぎつぎに　はっしゃされました。しかし、シルバーかめんは、とびくる　ロケット　ものともせずに、すすんでゆきます。
「こうげきは　そのていどか。では、こっちのばんだ。さあいくぞ　シルバーかめんの　ぎんのけんを　うけてみよ」スパーッ。なんでも　きれる　シルバーかめんの　けんで、ロボットかいじゅうは、さんまいおろしに　されてしまいました。「うわーい、シルバーかめんは　やっぱり　つよいや！」「オー、モーレツ！」
「これは　たまらん」うちゅうじんは　びっくりして　にげだします。「にがすな　えんばん　おいかけろ」「むうーん」シルバーかめんは　マッハ１００で　そらをとびます。まるで　ちよちゃんの　おとうさんです。たちまち　えんばんに　おいつき、たたきこわして　しまいました。
こうして　わるい　うちゅうじんは　ほろび、ちきゅうに　へいわが　もどってきました。ありがとう、シルバーかめん。ゆくぞ　せいぎの　シルバーかめん。（おわり）