ケイブンシャの大百科
Ｇ．Ｉ．ジョー大百科
ケイブンシャ　1986年
680円

「ゴー、Ｇ．Ｉ．ジョー！」
　いやあ、好きだったんだよね、この番組。派手にドンパチやってるのに誰も死なない（レーザービームはお互いに一発も当たらず、戦闘機が撃墜されても必ずパイロットは脱出する）といういいかげんさ。日本のアニメみたいに深刻になることは決してないので、頭を空っぽにして楽しむには最高の番組だった。
　しかも個性的なキャラクター揃い。特にコブラ軍団のキャラがみんな変で面白かった。田中亮一がおじゃる言葉で喋るコブラコマンダー。「コ〜ブラ〜」という江原正士の変なイントネーションが印象的なメジャーブラッド。悪役なのに礼儀正しく、戦車の秘孔を突いてバラバラにしてしまう忍者ストームシャドウ。「ザルタン参上！」と言って登場するカメレオン男ザルタン。ハモって喋るクリムゾンの双子……。
　『モンスターの逆襲』というゲームブックを作った時に、キャラクターの名前を『トランスフォーマー』と『Ｇ．Ｉ．ジョー』からいただいたり、『美葉２』でジンジャーブレッドというキャラを出して「ゴ〜ブラ〜」と言わせたのも、今では懐かしい思い出だ(^^;)。

　さて、この本ではその『Ｇ．Ｉ．ジョー』のキャラクターたちの、番組中に出てこない設定が紹介されている。いちおうフィギュアのブリスターにも書いてある公式設定なんだけど、これが面白いんだな。
　たとえば筋肉自慢の黒人、重機関銃手ロードブロック（本名マービン・Ｆ・ヒントン）。彼は一流の料理人になることを夢見て、フランスの有名な料理学校「エスコフィエ」に入学しようと、用心棒をしながら学費を貯めていたのだが、軍から「必ず一流のシェフに育てるから」と説得されて軍隊に入ったのだという。
　機関銃手のミック（本名クレイグ・マコーネル）は元サーファー。肉体を鍛え上げることに興味を持ち、ウェイトリフティングでパワーをつけ、ロックバンドでベースギターを担当して音楽から精神の安定を学んでいた。そんな彼がＧ．Ｉ．ジョーに入ったのは、自然を破壊するコブラ軍団に怒りを覚えたからだ。彼は誰よりも自然を愛する男なのだ。
　……なんか２人とも、外見から想像がつかない経歴である。
　カバーガール（本名クリガー・コートニー）は元ファッションモデルだが、モデル業に幻滅してＧ．Ｉ．ジョーチームに参加。自己を証明するには、自分の美しさとは無関係の仕事をしなくてはならないと考え、あえてＡＦＶ力学を学び、ウォルバリン戦車の操縦者となった。
　……これもちょっと、普通では思いつかないぞ。
　空手師範クィックキック（本名マッカーサー・イトウ）は、日本人の父親と韓国人の母親の間に生まれた。バスケットボール選手になりたかったが背が低かったために断念、テッコン道、剛柔流空手、カンフーの南派拳、太極拳刀術を習得し､ハリウッドでスタントマンをしていたところをＧ．Ｉ．ジョーにスカウトされた。
　……いや、ちょっと待て。なぜ日本人と韓国人の間に生まれたのに「マッカーサー」なんだ？　つーか、どっちが姓なんだそれは!?

　しかし、経歴のユニークさという点では､ならず者集団ドレッドノックのメンバー、チェーンソーを武器とするブザーが最高である。

　マヌケ揃いのドレッドノックの中でも､ブザーは非常に優秀な頭脳の持ち主だ。ドレッドノックに入る前は､イギリスの名門、ケンブリッジ大学で､社会学の講師をしていたのだ。その彼が、突然変わったのは、１年間にわたるオーストラリアへの休暇旅行のあとだった。長い楽しみのない学者生活を送り､いつも社会人の模範のような顔をつづけることに疲れきってしまっていた。そして、現代文明とそれを支える人類の文化に対し､ゆがんだ怒りを感じはじめたのだ。その時より、学者ブザーは、チェーンソウを振るう凶悪な男に変身したのだ。本名、ディック・ブリンケン。

　ケンブリッジの講師からいきなりチェーンソー男！　こんな劇的な転身はめったにあるまい。もっとも、そんなブザーの頭の良さが劇中で発揮されたことは一度もないんだが……。
　あっ、ちなみに、たった今思い出したけど、『ソード・ワールド』のドレックノールという街の名前は、ドレッドノックから来てるんだ。

　さて、ここまでは公式設定。本の後の方では「Ｇ．Ｉ．ジョー倶楽部」と題するＱ＆Ａコーナーがある。キャラクターがいろいろな質問に答えてくれる。ライターのセンスが発揮される部分である。
　やっぱりここでもコブラ編の方が面白い。

Ｑ
情報将校のバロネスさんとおつきあいしたいんですが…
Ａ
バロネス：おろか者め!!　私に交際を申し込むとは、身のほど知らずな!!　私はヨーロッパの貴族の血を引く者。本来なら、お前たちの質問などには、答えないのだが、今回は特別に答えてやる。私と交際したいのなら、世界の帝王になってみせろ!!

　言う言う！　バロネス様だったら絶対こう言う！

Ｑ
コブラの隊員の人に聞きます。コブラに入ってよかったですか
Ａ
コブラソルジャー：よかったに決まっているじゃねえか。そりゃ、訓練は厳しいけれども、コブラは能力があれば、それだけ階級も上がり、待遇も良くなって、特権も増え、好き勝手が出来る組織だ。好き勝手が出来るっていうのが、俺にとっては最高の生き方なんだ。

　コブラの待遇がいいというのは本当である。ある回では、南極にあるコブラの保養施設が出てきたことがある。ショーやアスレチックジム、ビリヤード場などが完備しているらしい。

Ｑ
クリムゾンの双子は、どうしていつも同じ行動をするの？
Ａ
トマックス＆ザモット：ハッハッハ、それはだね、我々兄弟の間には、お互いの心と行動が、手に取るようにわかる、テレパシーみたいなものが存在しているのだよ。だから、行動が同じになるのだ。便利な能力だが、片方が殴られるともう１人も痛いのが不便だな。

　エッチする時とかどうするんでしょうね、この２人（笑）。
　最後はやっぱりこのお方に締めていただこう。田中亮一の声でお読みください。

Ｑ
Ｇ．Ｉ．ジョーチームのことをどう思いますか？
Ａ
コブラコマンダー：なんだと、たわけた質問をするなっ!!　Ｇ．Ｉ．ジョーなど、我コブラ軍団に比べれば、ちっぽけなものだ!!　まったく相手になぞ、しとらんわ。まぐれで勝ったからといって、いい気になるな。世界は、やがて、私のものだっ!!　コ〜ブラ〜ッ!!

　えらそうなことを言ってますが、劇場版ではすごくみじめな最期を遂げます(^^;)。ちなみに日本でもビデオが出てたんだけど、コブラコマンダーの声がデビルマンからバイキンマンに変わってて、ちょっと嫌だったなあ。


おまけ
　ついでなので、当時、同人誌に描いたパロディも再録してしまおう。